ときめくものが変わった瞬間
⚠️完全な日記
先日髪をショートにしてブリーチで明るく染めた。どちらも人生初。
短い髪も明るい髪もどちらも似合わないと避けていたけれど加齢なのか好みが変わったのか、意外と馴染んで気に入っている。
しかしこれだけヘアスタイルが変われば当然似合う服も変わる。こんまりメソッドにより断捨離済のワードローブにある白、青、グレーで構成された「ときめく」はずの服たちは、もうどれを着ても違和感しかなくなっていた。
正直なところ、仕事日は制服を着るし休日は引きこもることが多いのであまり外出着について考えたことがなかった。
しかしコロナの影響で最近職を失った私には制服というものがない。このワードローブにある服たちがいわば今後の私にとっての制服。自分で選べるのならば、ときめきたい。少し遠出して県内でおそらく1番栄えているショッピングモールに行くことにした。思い立ったが吉日だ。
いざ来てみたもののその日は土曜日。休日。たまの休みに考えることなんてみんな一緒だ。県内一番のショッピングモールに溢れかえる人たち。ほどよい田舎に住みさらに休日は引きこもって過ごす人間には圧が強すぎる。
服探しもそこそこに人酔いしてしまい、所々に設置されているベンチに腰かける。間隔を空けて座るようテープが貼られたそこは辛うじて落ち着ける。
しばし休んで思考する。明確にこれといったイメージがある訳でもないのに服を買うなんて無謀だったか。それ程服に興味もない。今回服を選ぼうと思い立ったのだって半年ぶりだ。そもそも人の多い休日に出かけたのが間違いだった。……待てよ、これだけ人がいるのだから道行く人たちからファッションを学ぶには最適じゃないか?
かくして私は目的を「服を買う」から「ファッションを学ぶ」と切りかえ服装観察を始めた。
20分は観察していただろうか。分かったことは大まかに二つ。
ひとつはインスタグラマーのようなバチッと決まった服装の人たちはほとんど居ないこと。着れればなんでもいいといった感じの人、季節にそぐわない服を着ている人、思いっきり個性のある服を着ている人、ちぐはぐな印象の人、と多様だ。
何となく流行に乗るか、でなければ無難な服を着ていなければ恥ずかしいと思い込んでいたけれどそんな人達は少数派なのだと分かった。ならば好きな服を着たらいい。
もうひとつは私の服の好みだ。シャツにロングスカートとか、ノースリーブワンピースにカーディガンとか、シルエットとしてはシンプルなものが好みらしい。そしてスカートを履きたいようだ。
服装観察で得た収穫を元にシンプルな服を求めて再び店を巡る。10店舗ほど回っただろうか。少しもピンとくるものがない。これで最後にしようと半ば諦め気味にユニクロへとはいる。入口付近の白シャツとPaul & JOEのスカートを履いたマネキンが目に入り、(あ、これ良さそう)今日初めて良いと思った。
何はなくともまずは試着だ。マネキンを確認し、同じものを手に取り試着室へ入る。一瞬躊躇した。シャツはともかくスカートはこれまでの私なら絶対選ばない柄のものだったから。
私のワードローブは白、青、グレーで構成されている。スカートは白いデニム素材のものが一点だけ。なにより断捨離を終えたワードローブはもちろん始める前のそこにも柄物は1点もなかった。
スカート単体ではもちろん可愛いのだが、これを私が着る……?想像がつかない。
とはいえ試着するだけならなにも損は無い。さっさと着替え、大きな姿見に視線を移す。
あれ?似合ってる……似合ってる!?
明るい髪色とスカートの淡い柄が合っていて、白いシャツがスカートのガーリーさを和らげてショートヘアにも違和感なく馴染ませてくれている。
角度を変えて何度見ても似合ってる。(これ買おう)。決めるまでに1分もかからなかった。
無事購入し帰宅してからもこの可愛らしいスカートを選んだことが衝撃で、履いて鏡の前に立っては「しっくりくる……」と呟きワードローブに戻し、じわじわと湧き上がるときめきを味わい、また信じられなくてスカートを履き……5回はやっただろうか。気の迷いのような気がしてまだタグをはずせていない。朝起きてからも変わらずときめいていれば外すつもりだ。
ユニクロの服にときめいたのでGUではどうだろう?とウェブショップを見ていたところこんなスカートを見つけた。こちらも白、青、グレーを好んでいた私にはありえない色と柄だがとても惹かれている。早速明日、見に行く予定を組んだ。
スカート1枚で、私のときめく基準はすっかり変わってしまったらしい。元よりこちらが本質なのかもしれないが。